眇目の青空

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 結果、よくよく分かったのは、たった3日働くだけで、工場で30日働くのと、同じ給与をもらえることです。驚くアレッシーに、ストラは優しく語り掛けます。 「僕は君を、たまたま工場近くの染料屋で見かけたんだ。……素晴らしいと思った。君自身が、本当に美しいと思って、それから遠くから君を何度も見ていた。君の目が見えないのをよいことに、なんて浅はかなことをしたのか……」 「そうだったのですか? でもそれが、どうしてモデルへ?」 「なんていうのかな、君の声が、君の言葉が、君のふるまいが、とにかく僕には必要だ。1日でもいい。協力してくれないかい?」  しばらく考え、まず『1日だけなら』と、アレッシーは仕事を受けました。  ストラは優しくアレッシーの手を引き、馬車へと乗り込みます。絵描きというのはそういうものなのか、アレッシーには分かりませんでしたが、ストラの表現はとても的確で、ものをよく知らない彼も困らずに馬車の乗り降りができました。  連れてこられた場所は、嗅いだことがない匂いが沢山しました。 「まずはどうしよう、寝ている姿勢の方が楽かな?」 「鉄工所で働く身です、座っているのも立っているのも、似たようなものですよ」 「でも動かないのは大変なことだから、まずは横になった姿勢から始めようか。本当に、寝てもいいよ」  楽し気に笑うストラにひかれ、アレッシーは寝たことが無いような柔らかいベッドに横たわりました。それから体が苦しくないようにといろんな形のクッションを挟まれて、気が付くと。  ストラの言う通り、本当に寝ていました。 「……あれ?」
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