眇目の青空

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「おう、こく? ……そんな、それって、まさか」 「ええ。この大陸で戦争を引き起こし、多くの民族を殺した、王国人の生き残りなのです」  アレッシーはぴたりと、手を止めました。  彼の手をそっと外し、祖母は静かに続けます。 「わたくしは、かつて、王国人の一族として戦線に加わり、多くを殺した兵士の一人です。あの時は、王国人にとってそれが名誉であり、貴族の勤めでした。母も、私も、兵士として戦争に加わりました。それが……生粋の王国人。紫の目に、赤い髪を持つわたくしたちの使命だったのです」 「おばあ様……」 「そこで見つけたのが、貴方でした。アレッシー」  祖母は、さらに語ります。 「私と弟は、貴方の家族を見つけて殺しました。何のためらいも、なんの思いもなく。その中で、貴方を見つけたのです。まだ幼子の貴方に、弟は焼けた銃口をおしつけ、その眼を焼きました。……その時あなたは、泣かなかった」  呆然と立ち尽くすアレッシーに、祖母は続けました。 「なかなかった!! どんな屈強な男も、どんな凛とした女性も、最後には悲鳴を上げて泣き叫んだのを聞いていました。しかしあなたは、泣かなかった……!」  祖母の声は、ひきつれていました。 「……恐ろしかった!!」 「おそろしい?」 「怖かったのです、アレッシー。貴方が、私は怖かった。だから私はあなたを手元に置き、教育し、恐ろしいものではないようにしようとした。しかしそのうちに戦争は王国人同士のものへ変わり、私は国を追われ、家族は散り散りとなり、育てた貴方の金銭で生きざるを得なくなりました……」
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