眇目の青空

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 貧民街に暮らすものは、より地位のある存在に、いつか自分の価値を見つけてもらうことを思い描きました。もちろん、それが簡単にいくとは思いません。しかし、夢を見るのは自由です。  欲望は、アレッシーとストラの関係そのものに向けられました。ストラに連れられて金持ちのサロンへ現れるアレッシーは、彼をとても信頼していました。ストラ自身、浮いた噂のない男だったので、下賎にも彼とアレッシーは恋仲だと邪推する者もいました。  やがて彼らの噂は、国王の耳にも入りました。  戦争を経験した王子は立派な王になり、国をよく治めていました。彼は法外なほどの値段で売れているアレッシーの絵と、その描き手であるストラに興味を抱きました。 「このアレッシーとかいう青年の絵が、非常に高く売られているそうだね」 「おっしゃる通りです、陛下」  部下は頷いて、どれほどストラの絵が高額で売れるのか、そしてアレッシーの噂話が民に夢を与えていることも伝えました。  また、彼が貧民街の生まれで、彼の祖母はアレッシーの世話になるまいと、頑にその地を離れていないことも伝えました。夢を得たアレッシーのために、祖母は身を引いているようなのです。 「なぜ、身を引く? 祖母の存在は、アレッシーにとって、それほどまでに害となるのか?」 「それが……」  王が興味を持つことを見越して、部下はあることを調べていました。それは、アレッシーの祖母の素顔です。  話を聞いて、王は一つの噂話を流しました。 「王が、希なる絵師のストラ。そしてアレッシーと、内密にあってみたいと話している。もちろんアレッシーの祖母も共に」
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