私の日常は珈琲と共に

2/8
前へ
/277ページ
次へ
   大学進学を期に地方から上京してきた女の子は、いつからあんなにキラキラしてくるのでしょう?  綺麗で華やかなメイク。  凝ったヘアアレンジ。  パーソナルカラーに合った色合い且つお洒落な着こなし。  バイトでお金を頑張って貯めて買った、ちょっとお高いブランドバッグやお財布。  それらを全て身に(まと)い、都会の華やかな空気の(もと)で誰かと素敵な出逢いをして、その人と甘く(とろ)けるような恋愛をする。  ……そんな、薔薇の花みたいな濃密で(あで)やかな充実した毎日を送るようになるまで、世の女の子は必死に努力してるんだろうなぁ。なんて、同じく上京してちょうど一年の私は思ったりする。  そんな私はどうなのかっていうと……。  うーん……。  充実はめちゃくちゃしてるんだけど、キラキラした女の子達とは真逆のタイプと断言していい。  私の日常は良い意味でも悪い意味でも珈琲(コーヒー)色だ。  これはコーヒーカラーの小物や服装を好んでいるという意味ではなく、私が珈琲の焙煎豆や香りに囲まれた環境で生活してきた意味を指す。    大学進学を期に上京しても、私の頭の中は珈琲の事ばかり。  それはそれで幸せだと感じるんだけど、やっぱり焦る気持ちもある。  だって、私は片想いしか経験してきていないから。  やっぱり、成就した恋の甘みを経験してみたいから。  ……その甘さでもって、私の強い片想いを塗り替え上書きしてみたいという気持ちがあるから。  珈琲に囲まれて生きてきた、地味な田舎娘の私でも……甘い恋に触れてときめいても良いのでしょうか?  その甘さに酔いしれていたら、強い片想いをささやかな希望へと優しく変換する事が出来るのでしょうか?  それとも……。  地味な田舎娘の私には、甘い恋をしてを上書きするなんて資格は……やはり得られないのでしょうか?
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

262人が本棚に入れています
本棚に追加