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「……真澄の言ってた通り、イケメンで感じの良い人だったなぁ」
今はもう23時過ぎ。
未成年の男女2組ずつの夜桜合コンは、健全な飲み物やお菓子やピザ……それから90分という比較的短い時間内でお開きとなった。
というのも、今日のは「合コン」というには小規模レベルで、カップルの組み合わせも予め決められているお花見会だったからだ。
「なんかお見合いみたいな感じだったけど、一歩前進出来た気がする」
私は、メールアプリのアカウント交換したばかりのスマホをジッと見つめながら駅まで1人トコトコと歩いている。
「名前は…えっと……ゆうき…くんって、夕紀さんと同じ名前じゃん!漢字は違うけど」
お花見会の間はバイトの仕事疲れや真澄のお叱り内容の反省で半分頭の中がボーっとなっていたから、お相手の男の子の名前をたった今把握した状況だ。情けない。
「電車に乗る前にメッセージ入れとかなくちゃ!」
電車が来るまでの時間確保の為にスマホを鞄に突っ込むと、急いで駅に向かって駆け出した。
「はあっ……はあっ……。ギリギリ、セーフ」
急いで駅のホームへ向かって、急いで勇輝くんにメッセージを入れたらすぐに電車がきて乗り込む。
時刻は23時13分。
田舎では運行してない時間帯であっても、都会じゃまだまだ満員の現役ダイヤだ。
しかも今日は金曜日で、仕事帰りに何杯もお酒飲んできた人達ばかりで、春先だというのに熱気がムンムンしている。
(うっ……お酒くさぁ)
実家では飲兵衛のお父さんのお酌をしてたから、お酒の匂いにはある程度慣れてるつもりだったけど、ギュウギュウの車内の中で乗客のほとんどが飲酒してるこの空間じゃ我慢にも限界があった。
(帰宅する最寄駅まであと2つ。
時間に換算してみればたった4分なんだから、お酒臭い事くらい我慢しなくっちゃ!)
と思い直し、平然とした表情でいようと思ったのも束の間
「!!!!」
(嘘っ……やっぱり、夜の電車でもお尻触られてるっ!!!)
途端に血の気が引いて、両膝がガクガクと震え始めた。
たまたま今日は車両のど真ん中に私は立っていて、大きめのトートバッグを胸のところで抱えている体勢になっている。
おっぱいの方はなんとかガード出来たけど、壁に寄りかかれなかったから背後がガラ空きという重大ミスにたった今気付いた。
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