私の日常は珈琲と共に

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 「はー……シャワー気持ち良かったぁ」  私は頭の先から足の爪先まで全身綺麗に体を磨き、温かなお湯で洗い流すなりまた独り言を言いながらパジャマに着替え、玄関に置いたままだったトートバッグを片手に引っ掛けてシングルベッドの上へとそのままダイブする。  「……」  (ヤバい。独り言止めたら泣いちゃいそう)  「ジャズ音楽のヤツ聴こうかな。寝なきゃいけないし」  私はまだ心の中に残る恐怖心から逃れようとスマホを手に持ち、動画アプリをタップしてお気に入り動画を再生しようとしたら  「あれ?通知がいっぱいきてる」    ……それよりも前に8件の未読メッセージが付いているメールアプリのアイコンの方が気になって、そっちを先にタップした。  「……あぁ、ゆうき、くん…かぁ」  スマホ画面は、今日のお花見合コンで知り合った男性のトークルームに切り替わり、画面いっぱいに勇輝(ゆうき)くんからのメッセージやスタンプが連投されている。  「ゆうき、違い……かぁ」  親友の真澄に「彼氏が欲しい」「恋愛したい」と頼み込んで無理矢理メンバーを集めて開いてくれたお花見合コン。  開始してみたら結構楽しくて、初めて異性と連絡交換をしたその時は軽く舞い上っていたのに……。  深夜の痴漢行為に遭った私の今の気持ちはというと「あなたからの連絡でガッカリした」に近い。  「既読付けちゃったから、『今日はありがとうございます』と『おやすみなさい』のスタンプ送ろうっと」  ダサいファッションスタイルで田舎臭い私に笑顔を振り撒いて優しく接してくれ、「付き合おうよ」とまで言ってくれた勇輝くんの連投メッセージに対してスタンプ2個で返事するなんて、ノリの悪い女だと自分でも思う。  だけど、勇輝くんからのテンション上げ上げなメッセージを見ていたら、帰宅途中の事まで思い出してしまって、視界が涙でボヤけてくるんだから仕方がない。  痴漢行為で傷付いた気持ちを癒して欲しいのは、その場ですぐ出来た初彼氏ではなく、部屋の中に微かに残る焙煎豆の香ばしい香りと、姉のように長年慕っている夕紀さんの存在なんだから……。  「勇輝くんには悪いけど、朝起きたらちゃんとお返事してあげよう……」  私は本日最後の独り言を呟いて、全身を掛け布団ですっぽりと覆い隠し……(まぶた)を閉じた。
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