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「着替えるか」 「……ん」  二階のゲストルームまでキスをしながら戻り、ドアを開けたところで、やっと唇が離れた。お互い、名残惜しげに。  キッチンからずっとキスしてて、一色たちに見られねぇか、実は心配してたけどさ。アイツらは朝まで屋根裏からおりてこないって土岐が自信満々に言うもんだからさー。それならいいかーってなったんだよ。  俺も、こんな風に土岐とたくさんキスできるのは、すげぇ嬉しいからさ。 「浴衣、出せ。着せてやる」 「うん」  よっしゃ! いよいよペア浴衣の出番だ! 「ふっふーんっ。浴衣に、帯にぃ。あと、下駄ー。ほい、全部持ってきたよん」  土岐と揃いで作った俺の浴衣は、グレーの地に黒と紺の縦縞、それに薄いピンクのラインが細ーく入ってる洒落たデザイン。  土岐の浴衣との違いは、俺のはグレーがメインの地だけど、土岐のは黒地メインってとこだけ。あとは全部同じ縦縞なんだ。お揃いなんだ。ペアなんだ! うへへっ!  さて、いつもみたいに土岐が着せてくれるから、ササッと服を脱いでぇ……。 「ん? あれ?」  勢いよくTシャツを脱ぎ捨てたところまでは、良かった。 「……はっ! おおおお、思い出したっ!」  でも、そこで気づいた。次に脱ごうとしたハーフパンツのポケットに、デニムの感触とは違う、固い物体の感触があることに。 「何だ? 何を思い出したって?」 「なっ、なんでもねぇ! 大丈夫っ」  自分のバッグから浴衣を取り出してる最中の土岐がこっちを振り向いたから、慌ててごまかす。俺の大声で驚いたんだな、きっと。  それは、そうだろう。俺だって、びっくりだ。だって、俺ってば! 予言者様への電話、わ、す、れ、て、るっ!
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