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 時間がない!  階段を駆け下りながら、電話が繋がるピッという音を聞くなり相手にヘルプを求めてた。 「武田くん、どしたのー? 何かあった? 確か今、一色家の別荘に泊まってる最中じゃ……」  なのに秋田ってば、呑気にのんびり口調なんだよぅ。 「あっ、あのさ! 俺、秋田に教えてもらいたいこと、あってさ。けど、諸事情で時間が限られてっから、手短にパパっと喋ってほしいんだ。いいかなっ?」  だから、悪いと思いつつも、途中で遮って用件をまくし立てる。 「うん、わかったー。いいよ。チカに聞きたいことって、何?」  けど、さすが秋田だ。俺の失礼な態度にむっとした気配も見せず、すぐに切り替えて反応してくれる。 「あっ、うん。早速だけどさ。こないだ、お前ん家に泊まった時にさ、俺が頼んで一緒にやってもらったことあったじゃん? うん、そうそう、アレのこと! そんで助けてほしいことってのは、今日、土岐にさ……えっ? うわっ!」  ——ピッ……ピィーッ 「何、してる?」 「とっ、土岐っ?」  一気にキッチンまで走り、念のために冷蔵庫の陰でしゃがんで話してたら、会話の途中で背後から伸びてきた手にスマホを奪われた。  そして、すかさず切断、続いて電源オフ。ピーッという無情な操作音が、頭上で響いていった。すんごい早技だ。  さらに、降ってきた声と視線の冷たさが、キッチンにしゃがんだ俺にピリピリと突き刺さってくる。 「もう一度、聞くぞ。ここで、何をしていた?」  完全な無表情。けれど、放たれた声色と向けられた視線は、絶対零度の冷たさを孕んでいる。  ついさっきまでの甘い雰囲気は欠片も見当たらない、ぞくりと恐ろしいオーラを纏ったソイツは、さらに言葉を重ねてきた。 「お前、秋田に助けを求めていたか? ——ここに、俺がいるのに?」
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