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「あ、えーと……」  何から答えればいいんだろう。  つか、びっくりしすぎて、まずは自分の置かれた状況と頭の整理から入りたい俺なんだけど?  俺たちが今夜泊まるゲストルームは、ピアノが置かれてるせいか、完全防音。だから俺、安心してた。階段を駆け下りながら喋ってても、土岐に聞こえるはずないって。  それなのに、なんで土岐は、ここにいるんだろ? 「おい、秋田の家に泊まったと言っていたな。いつだ? 俺は何も聞いてないぞ。それに、秋田に頼んだ〝アレ〟とは何だ。俺の名を出してアイツに助けを求めた案件について、隠していることを言ってみろ」  ……すんげぇ喋ってる。  普段は口数の少ない土岐が、立て続けにすんげぇ喋ってる。  なんで土岐は、腕を組んだ仁王立ちで、ここで俺を見おろしてんだろ? どこからどう見ても着替え途中だったとしか思えない、クロップドパンツだけを身につけた半裸姿で。 「言えないのか? なら、来い」 「あっ!」  腕が取られ、強引に引っ張り上げられた。土岐の腕は俺とほぼ同じ太さなのに、片手だけで俺を立ち上がらせるなんて、すごい力だ。 「ちょっ、土岐っ?」  そのままキッチンを出て、階段まで連れて行かれる。 「えっ、また部屋に戻んの? 花火は?」  当然のように、また階段を上り始めるから、慌てて声をかけた。 「どっちにしろ、お前、下駄を部屋に忘れたままだろ。取りに戻れ」 「あっ」  そうだった。俺、スマホしか持ってねぇ。そのスマホも、今はお前に奪われたまんまだけどっ。  秋田に電話することしか頭になかったから、下駄を持って出るの、すっかり忘れてたよ。 「そのついでに、秋田に助けを求めることが『何の忘れ物』なのか、俺に事細かに説明してもらおうか。それが終わるまでは、花火大会はお預けだ」  えっ、花火お預け? マジ、で……?
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