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「土岐さぁ。先月のお前の誕生日に俺が贈ったプレゼント、あったろ?」 「あぁ。『幾何学(きかがく)を美味しくいただくための前菜』か?」 「そう、その本! 俺さ、今年の誕プレ、何を贈ろうかって、すっげ悩んでたんだよ。なんたって、恋人同士になれて初めての誕生日じゃん? 気合い入れたモンにしたくてさ。そん時に、『土岐くんにはこれがイチオシ』って、秋田に勧められたのが、あの数学書だったんだ」 「秋田が?」  何でもフルオープンにするついでに、今までの予言者様への相談のことも暴露しとこう。そう思って、秋田が一番ピンポイントでナイスアドバイスしてくれたエピソード。土岐の誕プレの話をすることにした。  もうじき花火大会も始まる。それまでの繋ぎのつもりで。 「んでさぁ? 実は俺、秋田にアドバイスもらったものの、数学書が誕プレでいいんかなって半信半疑だったんだよ。しかも、あのトリッキーなタイトルの本だろ? でも実際に贈ったら、お前、すっげぇ喜んでくれたじゃん? アレ、びっくりだったよー」 「秋田が、そんなアドバイスを……そうか」 「うん、マジでビビるくらい驚いたわ。『数学書だぞ? めっちゃ喜ぶってマジか、土岐! つか、なんで数学書のタイトルがわかってたんだ。マジか、秋田!』ってさ」 「そういうことか」 「そんでさ。お前が喜んでくれただけですんげぇ嬉しかったのに、プラス、その後にめちゃ濃厚なキスタイムが追加されてたじゃん? さらに幸せだったんだよー。お前の誕生日なのに、俺得になってんだもん」 「俺得……」 「そう、俺得っ。で、秋田のアドバイスにハズレはないって確信しちまってさ。それ以来、俺ん中で秋田は『恋の予言者様』になったんだよ。だから、予言者様への相談を続けたいから、そのことをお前には秘密にしようって決めたんだ。色々、ごめんな?」  土岐の誕生日なのに俺が幸せっていう、ちょっとおかしなオプションつきだったのも、ぜーんぶ秋田のおかげだ。アイツには、すげぇ感謝してる。  けど、『俺のことなら、俺に聞け』って土岐が言うから、もうフルオープンだよ。 「武田?」  秘密を全部暴露して、さっぱりスッキリ。気分よく夜空を見上げたその時、低めた声とともに、頬に指が触れた。
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