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暗闇の中にいた。
どこから来たかもわからない。
そして、どこへも行けない。
入り口はなかったし、出口もなかった。
だから、そこは、完璧な闇だった。
抜け出せない、抜け出すことすら考えられなくなるほどの、圧倒的な闇だ。
雨が降っているようだった。
光と一緒に熱もなくなった世界にいるかのように、寒かった。
このままここにいたら、凍死するかもしれない。
そんな、この世界から消えてしまうという恐怖さえ、どこか遠くの出来事のように感じられた。
冷たい雨の降りやまない真夜中。
繁華街からひとつ裏の、雑居ビルの、外階段下。
雑然と物が置かれている狭くて暗い隙間で。
ただ一人、うずくまっていたぼくの記憶の、それがすべてだ。
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