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ガチャリ。
玄関の鍵が開き、扉が開く音がした。
タケルが帰ってきたってことだ。
少し前からぼくはここにいる。
タケルの住むマンションの一室に。
タケルがどんな人なのか、ぼくはよく知らない。
歳は知らないけど、若いと思う。高校生より、ちょっと上くらい。
いつも髪の毛を、つんつんに固めている。
女の人みたいに、お化粧っぽいことも、少ししている。
生活はだらしない。
夕方まで寝ていることもあるし、帰ってくるのはだいたい真夜中だ。
だけど、部屋からすると、ずいぶんお金持ちな気がする。
リビングに寝室。そして、ぼくがいるこの部屋。
独り暮らしにしては、不必要なくらいに、広い。
この部屋からぼくが出ることはない。
閉じ込められているわけじゃない。
ぼくがここにいたいだけだ。
ぼくはここにしかいられないだけだ。
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