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「……っつー感じや。なかなかオモロイやろ?」と、扇田は再びぐふふと目を細める。瞼のたるんだ眼をしているから、笑うと目玉が瞼の裏に引っ込んだ。
「うん? 笑えるほどの面白さは感じられないけど。で、その大学がどうかした?」
「いやなあ、アルがオケ入りたいんやないか思うてな。ここやったらクラリネットパートを募集してるかもしれへんし」
「ああ、なるほど、そういうこと……」
薄いルーを掬ってひと舐めする。鈍い辛みが舌に残った。
一週間前、城西大学の管弦楽団に入ろうと、僕はオケの入団テストを受けた。ここは創部百年の伝統を持つ関西屈指の名門楽団で、所属団員数は百五十人を優に超す。OB・OGや地元市民団体からの支援も厚く、定期演奏会のチケットは毎度飛ぶように売れる、プロ並みの人気を誇る楽団である。
入学式で披露されたのはブラームスの「大学祝典序曲」だった。弦と管の音の波が何十層、何百層と重なって、その厚みがガツンとぶつかってきたようだった。衝撃波が体を揺らした。心を震わした。涙が出た。吹奏楽の次はオーケストラだと、その瞬間に僕は決めた。
入学式の終わった翌週に新入団員の募集が始まり、各パートにて入団テストが行われた。希望するクラリネットは希望者二十人に対し、募集人数三名という狭き門だ。倍率の高さにしり込みをして吹奏楽へ流れる人もいたのだが、それでも僕はこちらを選んだ。中学からクラリネットを続けて六年、高校での吹奏楽では朝から晩までの練習尽くし、パートリーダーまでこなしてそれはもう尋常のないほどの苦しみを味わってきたものだから、自分の腕に幾ばくかの自信はあったのだ。
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