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第七小会議室という表札の上から貼り付けられた紙には、手書きで公安第五課一係の文字。少人数かつ新設のため予算が無いのだ。
室内では透過スクリーンに現場写真などの記録が映し出される。そんな中、どこを見るでもなく一点に視線を張り付けた蝋人形のような鮎ケ瀬の姿があった。
「おい、大丈夫か?」
訝しげに声をかけたのは、彼女同様に一年前から配属され、現在バディを組む佐伯。
「ん……あ、佐伯君ごめん」
「はぁ……まーたかよ」
考え込む際に見せる無防備な姿をいつ外で晒しやしないかと、常日頃案じている佐伯は、やれやれとした面持ちになるばかり。
しかし、そんなことは露知らず小難しくなった顔は俯き加減に、佐伯の予想通りの言葉を吐いた。
「うん……気になるの。きっと何か見えてないものがある」
「だからって考え込む時、人形みたくなるのやめろ。何かあった時アブねぇだろ。この前だって駅のエスカレーターで、転ぶとこだったんだからな」
「うんごめん。分かってる」
「はぁ、っとに分かってんだか。
にしても、今回の事案……キメラ紋が出るなんて。こりゃおっきな事件になりそうな予感だぜ。
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