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――深淵の闇の中に、ぼんやりとした橙色が照らす。
蝋燭1本の灯りを頼りに、男は蹲っていた。
具合が悪いのではない。床に広げている本のページに、縋り齧り付くように、目を血走らせて、“あること”をしていたのだ。
「もうすぐだ……もうすぐで……」
本に記されているのは古代文字――男には、それが読めていた。
しかし彼は、学があったわけではない。
彼は至って平凡な村人である。
それは妻が生きていた頃と、何ら変わりない。
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