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最近はどこも明るくていけない。どこもかしこも人工的な光に照らされてるさね、おかげで随分住みにくくなった。ここのような、足元もよく見えないような、暗闇は珍しくなりましたな。
あら?お客様も珍しいですか、こんなガード下です。今となっては貴重でしょう。真っ暗で何かが潜んでいそうで怖い?おやおや若い人は想像力が豊かですな。
男がヒヒヒ、笑った。尤も笑ったように見えただけで乱杭歯が口の端から覗いただけであったが。
そうさねえ、古きよき時代といえばいいのか、ほら最近はとにかく明るいことがいいと云うような風潮でございますでしょう?開発が進んで、町並みも大分かわりました。夜遅くまで、明かりがついていて人の往来があるんです。景気がいいというのか、賑わいがあってよろしいことで。老いも若きも楽しそうですなあ。
無論子供は寝る時間ですが。ええ、よく寝ないと大きくなれませんからねえ。
でもねえ、私思うんですよ
物事には必ず2面性があります。対になっているともいえましょうが、陰と陽、男と女、太陽と月、
善と悪も然別ですな。どちらか片方だけがあるということはないのです。どちらかが無ければ対の概念は生まれないのですよ。風通しがよくて、陽の当たる家、明るくずっと活動できる家も住みやすくて素敵でしょう。しかし、かつての自然な暗闇、日暮れと共に訪れる陰にあわせて生活していた時代の方が長いくらいでした。暗くなれば外に出ていても家に帰り飯を食い寝てしまう。なんだか、動物として不自然な気がしてしまうのは時代錯誤何でしょうかねえ。いやいや爺の戯言と思って下され。
しかしまあ、これだけ人々は昼も夜もなく活発なのに、揉め事やちょっとした諍いさえ殆どありませんなあ。これも教育の賜物でしょうかねえ。私なんかはとんと無学なもんでわかりませんが、善性や道徳を重視した教育が行われているんでしょう?ちょっと前に条例もできて...確か健全で柔らかい精神を育むうんたらかんたら、でしたか。平和なのはよいことですがね。
暗がりの中で表情は判りづらいか、どこか愉しそうだ。背後に伸びている影は、並ぶガラス瓶ののせいで歪んでみえる。
でも皆さん気が付いてるんでしょうかね、
争いがなく穏やかな暮らしの中で、日々を過ごしていく。満ち足りた暮らしに満足している人達は多いはずです。でもここ数年新しいことがないんですよねえ。
新技術や新商品もないと思いませんか?もおかげで私も暮らしていけるんですけどねえ。
バケツに入った黒い煤のようなものを指さして、
おっと触っちゃいけませんよ!ついたら危ないんです。何が起こるかわかりません。どこの誰のものか分からないんですからね・・・。
そんなもの集めてどうするのかって?
いやいやこれが中々儲かるんでさあ。
取引先がね、買い取ってくれるんですが中々高値で
買ってくれるんです。いやいやどこの誰とは言えませんよ。固く口止めされているんです。
こういうのは、一つ一つは小さいかもしれませんが集まると厄介だそうで・・・スライムってわかりますか?
一昔前に凄く流行ったゲームのキャラクターなんですけど合体すると強くなるんです。そうなる前に潰したいということですなあ、おかげで我が国の博愛指数は世界でも上位に入るとか。
では、お預かりいたします。おや、中々の大きさですな。これではご苦労されるというものです。目のクマも察せられます。しかし安心してください。今晩からよく眠れると思いますよ。
へへ、毎度。
ではここは暗いので足元にお気をつけて。
暗闇【くらやみ】とは
1.暗い闇。光がなくて見えない状態。また、そういう場所。
2.人目につかない場所。人の知らない場所。
3.1が転じて、希望がもてないこと。見通しが立たず将来に不安を感じている状態。
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