光あれ

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子ども達が夏休みになってすぐのことだった。 夜9時頃、大輝が帰ってきた。赤らんだ恐い顔をしていた。 「書け!」と言ってリビングのテーブルに書類をバンとたたきつけた。 離婚届だった。 「そんな……」突然のことに祥子は絶句するばかりだった。 「書け!」テーブルにあった花瓶が跳んできた。 「だって……私そんなこと……」 「俺はもうお前と暮らすつもりはないんだ。わかってるだろう!」飾り棚にあった写真立てやオルゴールが次々と跳んできた。 「ちょっと……落ち着いて……」 「俺は落ち着いてる!書けと言ってるんだ!」 殴りかかってきた。 幸い子ども達は2階で寝ていた。 子ども達が目を覚ましませんように。気がつきませんように。 祥子はそんなことばかり考えていた。 置き時計が頭に当たって、少しの間気を失っていたらしい。 頭に水をかけられて気がついた。 「明日とりにくるからな!書いておけよ!」そう言い置いて大輝は家を出て行った。 目がギラギラしていた。異様な形相だった。 『大輝、正気じゃない』ボンヤリした頭で祥子はそう思った。 とにかくしばらくこの家を離れよう。 正気に戻るのを待たなくてはまともな話しができない。
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