またこの桜の木の下で会いましょう

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そして今また彼女と出会えた。 「遥香ちゃん、僕は全部思い出したよ。辛くて仕方が無かったんだ。忘れてしまって、ごめん。」 「守くん、私も病気に負けちゃって、死んでしまった。さようならも言えずに、辛い思いさせて、ごめんなさい。ずっと心残りだったの。だけど私、さようならを言うのは寂しくて嫌だったけど、お互いにとって前に進む為に必要だと思うわ。だから私達が出会った、この桜の木の下で、待っていたのよ。ちゃんと、さようならを言う為に、、」 「嫌だよ!僕はやっと愛する人にまた会う事が出来たんだ!僕とずっと一緒に居て。僕も一緒に連れてってよ!」 「駄目よ。守くん、貴方には、ちゃんと生き抜いて欲しいの。私は、何処にも行かないわ。いつも守くんの側に居るわ。」 そう言って僕を強く抱き締めてくれた。 「遥香ちゃん、愛してる。」 突然、瞼が熱くなり涙が溢れた。 「ありがとう。私も愛してるわ。だけど、ちゃんと生きて幸せに暮らして欲しい。それが私の願い。」 「わかったよ。」 「守くん、さようなら。またね。」 「さようなら。またね。」 僕がそう言うと徐々に彼女の感触は消えていった。 しばらく彼女の余韻に浸ると、 僕は、ゆっくりと桜の木を見上げた。 桜の花びらは1枚残らず全て散っていた。 僕も彼女も、やっと先に進む事が出来る。 だって、ちゃんと、さようならが言えたから、、
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