出逢い

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出逢い

何が起きているのか、理解が出来ない。 気がついたら自室ではない、知らない部屋に立っていて、部屋自体が揺れている。 ……船、だろうか。 誘拐…ではなさそうだ。縛られてもいないし、ドアも鍵があるようには見えない。 回り机とベッドがあるだけの、木造の簡素な部屋だ。 外に出てみないと現状を把握できない為、ドアを軽く押してみる。 「起きたのか。」 「っ!!」 ドアを開けた瞬間に話しかけられて驚いたが、聞きなれた声だった。 声がした方向に視線を向けると、やはり友人のレイドが立っている。 だが、何かが違う。 服装なども違うが、そういう違いじゃない。 ……そうか。俺に向ける視線が違うのだ。まるで別人みたいな、知らない人を見る目をしている。  「っ……?」 「…声が出ないのか?」 話そうと声を出そうとしているのに、音にならない。 今まで普通に話せていたのに。 喉がいたい訳でもないのに、声を出そうとすると何かに阻まれる。  「後で医者に見てもらおう。 お前、森の中で倒れてたんだ。面白そうだったから俺の船に乗せた。」 いや、それは誘拐っていうんじゃ… …レイドもそんな感じの人だったな。顔だけではなく、性格も似ているのか。 レイ「そうだ、名乗らないと失礼だな。 俺はレイド。お前は…文字書けるか?」 名前まで一緒とは、妙な偶然もあるものだ。 だが、本当に偶然なのだろうか。 もしかしたら、今俺は同じ軸の別世界に居るのでは? そうであれば彼が俺の知っているレイドであることになる。 …考えても仕方がない。彼の話を聞いてみることにしよう。 『リー』 渡されたノートに名前を書くと、文字は同じらしく彼にも読めたようだ。 レイ「リー、だな。 俺は面白い奴と強い奴を探している。 気に入った奴を仲間にして最強のグループを作ろうと考えているんだ。」 『俺は面白くも強くもないぞ。』 レイ「いや、お前は強い。力だけが強さではないだろう?」 「………」 レイ「何故って顔をしているな。 お前の書いた文字は旧ソペロ文字。この文字は既に存在していない国の文字で、その上沢山の文献が残っている為、文字を読める人は連れ去られる危険性がある。」 文字が同じなのではなくて、同じ文字が昔に存在していたのか。だが彼も読めた。頭脳の強さは、彼がいれば充分ではないだろうか。 レイ「お前は迷うことなく旧ソペロ文字を書いた。それは俺を信用したか、この文字しか知らないかのどちらかだろう。だがはじめてあった人を信用するようには見えないから前者は無い。」 頷く。 レイドは信用しているが、彼は同じレイドとは限らないから信用はしていない。 『それでは頭が良い説明にはならない。 ただの無知な世間知らずかもしれないだろう。』 レイ「そう考えられるのが頭の良い証拠だ。普通の人なら、頭が良いと言われて喜んで終わりた。」 …なんというか、本当に俺の知っているレイドと考え方も一緒なんだな。 レイ「そう嫌そうな顔をするな。これから共に世界を牛耳るのだから。」 『世界を支配でもするつもりか。』 レイ「それに近いな。さて、お前は晴れて俺の仲間第1号となった。よろしく頼むぞ、リー。」 『はいはい。お付き合い致しますよ、リーダー。』 彼と共に行動していたら、帰り方も分かるかもしれない。 もしかしたら他の仲間も、こうしてレイドみたいに別の人生を歩んでいるかもしれない。 皆が覚えていなくても、安全かどうかだけでも確かめておきたいものだ。 そう思い、差し出された手を握った。
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