新メンバーは

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カミ「あり得ない。こんなの絶対にあり得ないよ…」 ぶつぶつと、俺の隣でカミラが呟いている。 『いや、別に普通でしょ。』 カミ「一時間で文字覚えるのは、普通は無理だからね!?」 レイ「流石リーだな。まさか一時間で覚えるとは…」 『一度見たらある程度は覚えられる。後は応用だけだ。』 一時間で日常会話をするのに充分な文字を覚えた。 文法は旧ソペロ文字と同じだったので単語を覚えるだけで済んだ。 ノートに書く文字を早速一般の文字に変えてみる。 レイ「矢張り俺の目には狂いがなかったな。リーはこのグループの頭脳だ。」 『煩い。そんな大層なものじゃないよ。』 カミ「リーがこのグループの頭脳なら、僕は航海士って所?」 レイ「ああ。船の操縦や海の状況を読めるのだから、航海士と名乗れるのではないか?」 実に曖昧な答えだ。 だが彼は船を操縦できるらしい。そこは俺の知っているカミラとは違うようだ。 『それにしても、君たち何を連れてきたの。人の気配が凄いんだけど。』 カミ「え?」 レイ「いやぁ、多分町の人たちだ。半分拐うような形でカミラを連れてきたからな。」 『君は全く…』 ぞろぞろと、停留していた岸に農業の道具を持った男たちが集まってくる。 「海賊!カミラを解放しろ!!」 カミ「あちゃー。」 『愛されてるんだな。』 レイ「…俺たち、海賊に見えるのか?」 『少なくとも君の格好は海賊に見えるが。』 レイ「そうか……」 『変なところでへこまないでさっさと対応してよ。俺話せないから君たちしか行ける人が居ないだろ。』 カミ「僕が弁解してくる。」 4、5メートルある船から飛び出していく彼に驚くが、平然と着地をしていて唖然とした。 この高さなら下手したら足折れるだろう。身体能力が高いのか? 念のため俺も降りるが、流石に飛び降りはせず梯子を使った。 カミ「皆、心配してくれるのはありがたいけど、拐われたわけではないよ。自分で着いていくって言ったんだ。」 「海賊に親を殺されたのに、海賊に着いていくなんておかしいだろ。脅されてるとしか思えない。」 『俺たちは海賊じゃない。リーダーがあんなのだから疑われるのも無理はないけど。』 カミ「リー、話せないって言っといて結局降りてきてるじゃん。」 『うちのリーダーが使い物にならないからな。 あの顔で交渉とか説得とか無理だろ、絶対。』 「ほ、本当に拐われたわけではないんだな?」 カミ「だからそういってるじゃん、安心してよ。 僕は経験と力を付けたいんだ。だからレイドに着いていく。」 「そうか…寂しくなるな。」 カミ「僕もだよ。 ……ねぇ、この人数で来てるということは、町の人たち皆知ってるんだよね?」 「え?ああ、そうだけど…」 カミ「…ヤバイな。リー、今すぐ出発しよう!」 『どうしたんだ?』 カミ「あの女が…」 カミラがカタカタと震え始めた為、慌てて担ぎ上げて船に乗り込む。 すると梯子を登りきる所で女性の声がした。 「カミラ様!待ってくださいませ!!」 「ひっ、」 『あの女が嫌いなのか?』 カミ「女性が苦手なんだ!なのにあの女性はずっと迫ってくるし!!無理!」 ………女性が苦手なのは相変わらずなのか。 カミ「レイド、出発するよ!全速力で別の島に向かう!!」 レイ「ああ。」 カミラの慌てぶりにレイドが笑いを隠しきれていない。 この様子だと、彼が女性嫌いであることを知っていたな。 急発進した船から陸を眺めながら、両手を大きく振るカミラの知人達に見送られた。
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