妖怪を飼う

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 五十代くらいのおばさんがダンボールの前に来て言った。 「捨て猫か。保健所に連絡しなくちゃね」   その時、百恵が現れた。チーズハットグを食べ終わって様子を見に来たのだ。 「この猫、私が飼うんです。これからキャリーバッグを買いに行くんですよ。三十分もしたら戻って来ます」 「そう、捨て猫なんてどんな病気を持ってるか分からないじゃない。保健所に引き取ってもらうのが一番じゃない?」 「家に連れて帰ったら動物病院に連れて行って診てもらいますよ。予防接種なんかも必要でしょう」  まだお母さんの了承を得てないのだがついつい言ってしまった。これはもう引き下がれない。 「まあ、そこまで言うのなら保健所には言わないよ。責任を持って育てるようにね」  百恵もぬらりひょんもホッとした。おばさんは大きなお尻を振って去って行った。  百恵は新宿へ行った。グーグルマップでペットショップの場所を調べる。駅から遠かったが案外簡単に行けた。中には可愛い仔犬や仔猫が売っている。だがあの痩せている猫を飼うと決めたのに目移りしたらいけない。百恵は水色のキャリーバッグを買った。  新大久保に戻って仔猫の前でスマホをバッグから取り出した。連絡先を開いてお母さんに電話する。お母さんは霊媒師だ。自宅の一階で霊視をする仕事をしている。視ているのは一日に三人くらい。地方からお客さんも来る。
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