妖怪を飼う

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「あ、もしもし、お母さん?猫を飼ってもいい?」 「なんなの急に?今日は新大久保に行ったはずじゃない」 「そうだよ。捨て猫がここに居るの。ねえ、飼ってもいいでしょ」  お母さんは困った。家には動物アレルギーのお客さんだって来る。でも百恵は弾んだ声だ。仕事をしている和室に入れなければいいか。でも一応猫を視ておかなければいけないとも思う。 「取り敢えず連れて来なさい。抱っこして電車に乗ったらダメだよ」 「うん、大丈夫。お母さん、ありがとう」  百恵は猫をキャリーバッグに入れて駅に向かう。日本語学校がたくさんある。改札を抜けてホームに行った。山手線に乗る。 仔猫は大人しくしていた。  ぬらりひょんは早く元の姿に戻りたかった。頭の歪んだ禿げ頭に垂れた目。百恵の家に行ったらすぐに猫から妖怪になってお茶でも頂くつもりだ。ぬらりひょんは昔は勝手に人の家にあがってくつろいだのだが、今はセキュリティ対策している家が多いから油断できない。警備員や警察に捕まるのは御免だ。  三郷駅に着いた。ここからバスで二十分だ。バスターミナルで立っていると幼稚園くらいの子供が「にゃんにゃんだ」と言った。百恵は目を細めて微笑む。  百恵はバスに乗りながら餌とトイレはどうしようか考えた。一旦、猫を家に置いてからペットショップに車で乗っけていってもらおうか。お母さんは車を持っている。  玄関を開けて家に上がった。お母さんは猫を見て目を丸くした。 「あ、ぬらりひょんじゃない」 「え?」  百恵は驚く。この子が?可愛い仔猫なのに……。
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