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次の日になった。お母さんはチーズが無くなっていることに気が付いた。リビングのソファーでは仔猫の姿ではないぬらりひょんがぐうぐう鼾を掻いている。お母さんは溜息をついてぬらりひょんの頬を軽く叩いた。
「妖怪のボスがなんて格好で寝てるの。百恵が見たら驚くじゃない。仔猫の姿になって」
「そうは言うけどもう見破られてるんだろ。それに驚くような酷い容姿じゃない。それより、お母さん、コーヒーはもっと高い豆にしたほうがいいよ」
十分気味が悪いのに自覚症状がないらしい。バチバチッと火花が聴こえそうな言い合いになった。そこへ百恵が起きて来た。ぬらりひょんの真の姿を見て飛び上がりそうなほど驚いた。
百恵は今日は学校が休みだが明日から学校だ。今日のうちに問題を解決しなければいけない。お母さんも明日は霊に憑かれたというお客さんの予約が入っている。
じりじりしているとぬらりひょんが言った。
「朝ごはんを食べさせてくれれば出て行くよ。漬物に納豆、海苔も食べたいな」
「出て行ってまた仔猫になるの?」
百恵はそう言って首を傾げる。
「ああ、猫を飼う家はマンションじゃないだろう。わしは一軒家がいいんだ。本当はここがいいんだがね」
ぬらりひょんはそう言うとソファーからリビングのテーブルの椅子に移った。足が短いので床に届かない。
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