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朝ごはんはリクエスト通りキュウリの浅漬けにネギを入れた納豆、海苔だった。お母さんは優しい。
「ごちそうさま」をして二階に行く。百恵はスウェットから黄色いTシャツとデニムスカートに着替えた。昨日は出掛けたから今日は家で過ごしたい。宿題もある。クッションに座ろうとしたときノックの音がした。
「百恵、ちょっといい?」
「ん?なに」
「ぬらりひょんがまた猫の姿に戻るから新宿の近くか池袋、渋谷あたりに連れてってほしいらしいの。なんでそこがいいのって訊いたら埼玉や千葉から出て来る人が多いからだって。私、最初は出て行ってくれればいいと思ってたけど、被害者をだしたくないの。協力してくれる?」
そこへ階段を上がって来たぬらりひょんがお母さんの後ろから顔を出した、しみのある汚い肌。これがあんなに可愛い猫に化けてたとは。
「お腹が痛いな。朝食が悪かったんじゃないか?」
「は?」
お母さんは眉根を寄せる。
「少し寝るよ。一階の和室を使うから」
「そんな嘘つかないでよ。私たちは同じもの食べたけどなんともありません。痛んでいるものは食べさせませんよ」
お母さんは腹がたった。ぬらりひょんは口笛を吹いてとぼけた。腹痛がする人が口笛が吹けるわけがない。だが本当だったら可哀そうだ。お母さんは渋々言う。
「ぬらりひょん、一階に正露丸があるから飲むのね。場所を教えるからついてきて」
二人は階段を降りて行った。お母さんは棚にある薬箱を開けて正露丸を取り出した。ぬらりひょんは涼しげに「もう治ったよ」と言った。この薬は匂いが苦手だ。
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