第一章 銃撃戦

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 政府に不満を持っていると、一般人を装って組織の末端に入り込んだ。  訓練を受けるふりをしながら戦闘力を少しずつ見せると、順当に組織の中心へと近づいていった。  半年以上の時間を掛けて、ようやく彼らの組織の本部に向かう権利を得たのだ。  怪しまれない人数で組織の中心へと入り込む作戦だ。彼女の役割は、相手が持っているだろう警戒心を解くものだった。  華奢な女性が国軍の一員とは普通考えない。政府の弾圧で親が殺されたという生い立ちを彼らは簡単に信じた。  何もかも順調だった。思わない事態で正体が明らかになるまでは。  失態を犯した男はテロリスト達に()らえられている。激しい、尋問(じんもん)という名の拷問を受けただろう。  しかし、同情する気持ちはない。彼の行動で、慎重に進めた作戦は失敗に終わり、彼女達は脱出にも苦労している。  捕まった男の運命になど思いを向ける余裕はない。  無事に脱出して、この屈辱を晴らしてから改めて考えるかもしれないが、今は、(さめ)の餌にでもなってしまえ!という気持ちだ。
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