第二章 戦死報道

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 ***  食事を終えると、彼女はソファに沈み込むように座った。  室内なら自由に歩き回れる。拘束されているとは思えないほどの待遇だ。革紐とこちらも革製の首輪の存在さえ忘れていれば、だが。  ティグレの意図が分からない。  平手打ちするほどの怒りを覚えた女を、自分の部屋になぜ監禁したのか。見ているだけで怒りが湧いてくるだろうに……  沈んだ気持ちで座っていると扉が開き、疲れた表情のティグレが入ってきた。  廊下に声を掛けているので、誰かと一緒だったのだろう。敬礼の気配がして消えた。  「ずいぶん大人しいな。怪我が痛むのか」  怒りも皮肉も感じない声に、彼女は答えなかったが首を振った。  謝罪したいと思うのに、反抗的な態度を取ってばかりいたので、どうやって言えばいいのか分からなかった。  だが、彼女が悩んでいる時に、ティグレが声を掛けてきた。彼女の頬に静かに触れながら。
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