第二章 戦死報道

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 「痛くないか……  悪かったな、何も知らないおまえをいきなり叩いて。  この組織での決まりごとなど、政府軍のおまえが知るわけもないんだからな。  思わず我を忘れてしまった。本当に悪かった」  彼女は大きく首を振った。  悪いのはティグレではない。非道な行為を声高に叫んだ彼女だ。  自分を(おとし)める行動を相手に強要した。そうすれば純粋な被害者になれると……  この組織は捕虜を人として扱っている。そのことが逆にいたたまれない恥ずかしさを覚えさせたからだろう。  もし、非道な行為をされたら、自分を正当化できる。こんな奴らに捕まりながらも生きているのは、それだけで賞賛されるのだと……  恥ずかしくてティグレの顔を見ることができなかった。だが、謝らないとならないのは分かっている。  間違いを認めない人間ではいたくない。  「……すまない……何も知らないで、ひどいことを言った……」  謝罪の言葉を聞くティグレは驚いているようだった。
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