第二章 戦死報道

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 「それは良かった。  だが、早く寝るといい。シーツは毎日取り換えているはずだ」  ベッドで休めということのようだ。そして、リネン類は洗ったものだから安心して寝ろと言いたいのだろう。  だが、この部屋はティグレのもの。ベッドは彼が使うべきだ。  「ベッドはおまえが使え。  私は捕虜だし、恥ずべきことも言っている。独房でも文句が言えないのだから、この部屋にいるだけで温情と思ってる」  独房に行きたいわけではないが、一人になればきちんと反省できるだろう。  しかし、ティグレはその言葉を無視すると彼女を抱き上げた。思わない行動に彼女は固まってしまった。  「怪我人は素直に言うことをきけ。  床には絨毯(じゅうたん)が敷かれている。土に比べれば天国のようなものだ」  ティグレは実際に野営をしたことがあるのだろう。言葉に実感があった。  訓練以外で厳しい場所に行ったことのない彼女には何も返せない。  ベッドに静かに置かれると、心地良い感触に表情が思わず緩んだ。そんな彼女にティグレが苦笑した。
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