第二章 戦死報道

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 「そのまま寝ればいい。早く回復させろ。今、おまえにできるのはそれだけだからな」  「……訊いていいか」  尋ねると、ティグレは意外そうだったが頷いた。  「なんだ」  「どうして捕虜にここまでする?  しかも、禁句を口にした女に対して」  訊かれたティグレは、顎に手を当てて少し考えていた。どう言えばいいか迷っているという雰囲気だ。  「……理由は複数ある。  だが、政府軍に返す時に怪我をされたままだと、おそらく呆れた発表をするだろう。  好きに言っていろ、とは思うが(わずら)わしくもある」  ティグレの言葉に彼女は驚いた。  「そんなに早く返してくれるのか?」  意外だった。  このまま捕虜として、しばらく拘束されたままかと覚悟したからだ。
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