第二章 戦死報道

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 「当たり前だ。  それに、軍に戻らなかった者は自分の意志で残って、こちらの組織に加わっているのだ。  もっとも、そういう者達は、こちらに殺されたことになっているのだろうな」  「……」  皮肉な言葉に返せない。  捕まった当初なら信じなかったはずだが、今なら分かる。反政府組織(彼ら)の行動は政府軍よりもはるかに公平だ。  こちらの組織を選ぶ者が出ても不思議ではない。  「捕虜交換を考えている。  どうしても返してほしい人間がいてね。三年ほど君達のところにいるから、そろそろ飽きたはずだし運動不足にもなるだろうからね」  言葉は皮肉交じりだったが、内容には驚いた。  普通、それほどの長期間、捕虜を拘束しないはずだった。  その時、気づいた。  ティグレの妹は、政府軍との交戦で捕まったと金髪の男は言っていた。  数年前なのは説明で分かっている。それなら、その時の指揮官の可能性が大きい。
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