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首の後ろで腕を組んでいるティグレは、明かりを消してから訊いてきた。
「シャワーはまだ無理なのか?」
頷いた後、暗がりで分からないと気づいた彼女は返事をした。
「ああ。右肩に水をつけては駄目だそうだ」
「そうか……それなら、明日、女をここに呼ぶ。
身体を拭いてもらえ。多少は違うだろう」
聞いた彼女の声が弾んだ。
「いいのか?」
汗を拭えるなら本当に嬉しい。気持ち良くなることを想像すると思わず笑みが浮かんだ。
隣から苦笑の気配が伝わってくる。
だが、捕虜の女にそこまでする必要はないはず。思わないティグレの優しさに彼女は、おそるおそる訊いた。
「どうして、そんなに親切なのだ?」
少し沈黙が入った。
「……どうしてだろうな。怪我をした猫が可哀想だったのかもしれない」
怒るべきなのに、彼女はなんとなく心が温かくなった。
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