第二章 戦死報道

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 「偵察かな?」  軽い声がした。  頻繁に捕虜に会いに来る、この男の正体がまったく分からない。  生い立ちを聞いたから、幹部の息子でないのだけは確かだ。まさか、と思うが、指導者の愛人だろうかと思ってしまう。  エアルド解放戦線の統率者の正体も、コードネーム以外まったく不明。  当然、男女どちらかも分からない。この男の外見なら、どちらでも愛人にして不思議ではない。  さすがに確認できる内容ではないが……  男の言葉を否定する。  「そんなことはしない」  仮にそうであっても否定するし、窓から見える景色で場所は分からない。  「へぇ、意外だな。もっと堅苦しい軍人と思ってたけどね。  ティグレが(こぼ)してたよ。  猫が素直でないのは知ってたけど、思ったよりも動くとは知らなかったってさ」  思わず赤くなった。
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