第二章 戦死報道

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 眠るうちに、いつの間にかティグレの胸の中に入っていた。驚いたが、動いたのが自分だと気づくと、その時も赤くなった。  ティグレは黙って彼女を受け止めてくれていた。本当に猫と思っているらしい。  「俺の部屋でもいいんだよ。  こんな猫なら可愛がっちゃう。引っかかれても大丈夫。俺、女性断ちしてないし」  今度は青くなった。  この男なら、怪我の有無など気にしないだろう。  だが、ティグレが女性を抱いていないという事実は、複雑な思いを彼女に(いだ)かせた。  他の女の存在を心配しないで済むという安堵感……自分でも信じられない感情が湧いていた。  そして、決して、自分を女性として見ることはないという失望の思い。  喜ばしいはずなのに、どうして寂しいのか……  「ご冗談はおやめください」  ローボが男をたしなめた。
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