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「……分かった、考えよう。
だが、一人が認められないのは覚悟しろ。今は私が護衛代わりだ」
言われた内容は承服しかねるようだが、同行するのがティグレだけと聞いた黄金色の髪の青年は機嫌を直した。
「おまえと二人って、ガキの頃以来か……いい時代だったな」
外見から考えて二十代半ばと思われる青年の言葉ではない。過去への追憶と重い響きが伴われていた。
「ああ、そうだな……」
幼馴染である二人は、遠くなった無邪気な日々を共に思い出していた。
「しかし、仲間を見捨てて逃げるとはな。もう少し本気で狩っても良かったんじゃないか?」
物騒な言葉に、ティグレは曖昧に首を振った。
「あえて逃がした。向こうがどう出るか見たくてな。
あの坊やの言葉を信じるなら、リーダーは第一師団(軍隊における部隊の名称で、エアルド陸軍では一万人規模)の参謀部だそうだ。おそらく何か策を打ってくる。
だが、こちらに捕虜がいれば、さすがに無茶はできないだろう。捕らえたのはリーダーの恋人だからな」
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