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「じゃあ、行ってくるわね~!」
「いってらっしゃい‥」
何てことないいつものやり取りが今日は寂しく胸に突き刺さる。
「お母さん‥私、今日12歳になったんだよ‥」
そう呟きながら、埃を被った写真立てを指でなぞった。小学校の入学式でお母さんと並んで撮った写真。満面の笑顔が眩しく映った。
今夜は写真立てを抱えながら、眠りにつく。
でも眠れない。涙が止まらない。
お母さん。お母さん。お母さん。
寝床についてから、どれくらいの時間が経過しただろうか‥?
日付も変わり、誕生日もとう過ぎた時間、玄関のドアが「ガチャリ」と鳴った。
「ただいま~」
そこには、いつも通り酒の臭いを纏ったお母さんがいた。
いつもと違うのはお母さんが大きな花束を抱えていたこと。
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