贈り物

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「みんな、今日は来てくれてありがとう!」  ステージにいる想真が話し終わるたびに歓声が沸く。その歓声にノリノリで応える彼に、まわりのメンバーは呆れている。  突然、想真は黙り真剣な表情になる。それと同時に会場の歓声も少しずつなくなり、静寂に包まれる。 「次に歌うのは、ピアノを弾けなくなったお母さんを想って作った曲…。メンバーのみんなも一緒に作ってくれました。今月は、ちょうど母の日もあるからね。願いを込めて……」  お辞儀をしてから、想真はステージに用意されたピアノの椅子に座る。そして、そっと両手をけん盤の上に置き、ピアノを弾き始める。メンバーみんなと笑顔で頷き合ってから、みんなで歌い始めた。 『……お母さん、聴いてる?お母さんがまだ弾けなくても、ぼくが弾く。…だから、この曲を聴いて笑ってくれてるといいな』  歌いながら想真は心の中で呟く。 「……ありがとう」  遠い客席で、幸成と一緒に来ていた梨子は嬉しそうに微笑んでいた。
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