贈り物

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 想真は、小さいころの夢を見ていた。母親・梨子の実家に帰省したときの光景だった。  梨子の弾くピアノを、縁側で父親・幸成と一緒に聴いている。 「ぼく、お母さんのピアノ大好き!」 「想真は、いつもそう言ってくれるから嬉しいわ。お母さん、また仕事頑張れそう」 「お父さんも、お母さんのピアノ好きだぞ!昔もよく、お父さんの歌に合わせて伴奏をしてくれたよな」  梨子がピアノを弾くと、すぐに家族みんなが笑顔になった。  小さいころからピアノが好きだった梨子は音楽家になり、ピアノ曲を多く出して有名になっていた。そして、曲作りをきっかけに国民的アイドルだった幸成と出会ったのだ。 「よし、お父さんも歌おうかな」  ふと、幸成は立ち上がり歌い出した。気分がのってくると、幸成はいつも突然歌い出す。そうすると、想真はワクワクしてしまう。 「えー!じゃあ、ぼくも歌う!」 「よし、三人で歌おう!」  梨子は呆れながらも、笑顔で想真を見た。嬉しそうな想真が頷くと、梨子は幸成の声に合わせてピアノを弾き始めた。
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