贈り物

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「……想真。なにか、夢でも見てたのか?」 「え?」  また突然、声をかけられた想真は、おそるおそる伊織のほうを見る。しかし、伊織の表情は落ち着いていた。 「…うん。小さいころの夢を見ていたんだ。いおりんには、ぼくのお母さんのこと話してたよね」 「あぁ、梨子さんのことか。いまは、たしか統合失調症で入院、活動休止中なんだよな」  落ち着いた表情の伊織に安心した想真は、また座りなおして自分も落ち着くことにした。そんな想真につられて伊織も椅子に座る。 「うん。好きだったピアノも弾けなくなって、ぼくが小学生のころからヒステリーを起こしてたんだけど、最近じゃ、無表情でヒステリーも起こさなくなってるらしんだ。…だから、ぼく、おじいちゃんたちの家に行ってみる!」 「あぁ…。…えっ、梨子さんの実家に行く!?」 「うん」  静かに話し始めた想真の話に頷いていた伊織だったが、驚いて聞き返していた。そんな伊織に、想真は真剣な表情で頷く。 「なんでまた…。しかも、いきなりじゃないか」  伊織は想真の言葉にも驚いたが、滅多に見せない表情をする想真に戸惑っていた。 「お母さんがピアノを弾かなくなってから、おじいちゃんたちの家にも行かなくなった。でも、さっき夢を見て、あの場所に行けばなにかわかるんじゃないかって思ったんだ」  真剣な表情で話す想真に最初は戸惑っていた伊織だったが、想真の一生懸命な姿を見て『手伝おう』と思った。 「…いいんじゃないか。もうすぐ休みもらえるもんな。あの二人には、おれから話しておく」 「ありがとう、いおりん」  伊織が微笑むと想真も笑っていた。
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