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【 第8話: あの河原へ 】
時計を見る。時刻は朝の4時。
まだ、間に合うかもしれない。
私は布団から出ると、すぐに着替え、お父さんを起こさないように、静かに家を出た。
そして、歩いて数分のあの小川へと向かった。
橋の横のコンクリートでできた階段を下り、石のゴロゴロとした河原へ出る。
川の流れは、あの頃より少しだけ速いような気がした。
辺りは、少しずつ明るくなってきている。
私は、あのいつも座っていた椅子の形をした窪んだ石を探した。
「確かこの辺りだったと思うんだけど……。もう、流れちゃったかな……」
小石の沢山あるところには、あの石は見つからなかった。
履いている赤い靴のまま、少し川へ入ってみた。
「つ、冷たい……!」
さすがに、真冬の川の水は冷たい。
私の細い足には、堪える様な冷たさだ。
川に手を突っ込み、あのいつも座っていた大きな石を探す。
どれくらい探しただろう……。
もう、手や足の感覚も無くなってきている。
日もかなり登り始めた。
辺りも随分と見やすくなってきて、川の中の様子もかなり見えるようになった。
そして、その石は、あった……。
自分が想像しているよりも、その石は遥かに小さく感じられる。
「こんなに小さかったんだ……。でも、この窪み、この形は間違いない……。これだ……」
遂に、見つけた。いつも座っていたこの石。
ここで、あのお母さんのキラキラを落としたんだ……。
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