206人が本棚に入れています
本棚に追加
(でもこの前、俺も凪ちゃんから訊かれたんだよなぁ……)
虎我の通話をよそに、先日のファミレスでの別れ際で、凪から袖を引かれて駐車場でコソコソと話した時のことを思い出す。
『忌一さん、虎我さんて……彼女いるんですか?』
『え? 凪ちゃんて虎我みたいなのがタイプなの?』
『いや、私じゃなくて。葵が……』
そう言って凪と一緒に振り返ると、車の前で葵と虎我が何かを話し込んでいるのが見えた。おそらくこの時に連絡先を交換していたのだろう。
(っていうか、葵ちゃんの行動力!)
何も恐れるものがない思春期特有の行動力に頭が下がる。思春期を異形で棒に振っていた身としては、その行動力が羨ましい限りだ。
そんなことをぼんやり考えていたら、通話を終えた虎我が、「今から葵ちゃんの家へ向かう」と言い出した。そして訊き出した葵の自宅の番号を、カーナビにセットしている。
「いきなり行って大丈夫か?」
「まぁ、何とかなるだろ。村雨の詐欺被害について聞き込み捜査に来ました、とか何とか言えば」
詐欺師は一体どっちなんだろう……そう考える俺が横に座っているとも知らず、虎我は静かにパトカーを発進させるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!