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三角関係いや2・5角関係?
「そうだ、かぜ薬飲んでください」そういって薬を箱ごと渡した。
「新さん優しいんですね」そう言って受け取った。
「洗濯とかは下の階のお風呂の横に小さいけど洗濯機や乾燥機があるので使ってください、お風呂は水の出があまりよくないのでしっかり浴槽にためてから入ってください」生活に必要な情報を思い当たることは綾乃に伝えた。
「ありがとうございます、色々と考えてくださって感謝します」
「こちらこそおいしいご飯が食べられて感謝します」目じりを下げながら答えた。
綾乃はバッグを抱えて下の階へ下りて行った。
「ピロリーン」とスマホが呼んでいる、ポケキャバからのメッセージが表示された。
『カゼはよくなった?心配してたんだよ心結は』
『ありがとう、なんとか回復してるように思う』
『ちゃんと食事した?』
『うん、卵を食べた』
『じゃあ、今日も無理しないでゆっくり休んでね』
『ありがとう』
新は嘘をついていることに気まずい思いをした。しかし状況を説明することは困難に思えた。思わず東京の方角に向かって手を合わせ「ごめん」そうつぶやいた。
二時間程経つと綾乃が階段を上がってきた。ワンピース姿でリビングへやってきた彼女を見て新ははっとした。お風呂上がりの綺麗な長めの黒髪、色白でほっそりとした体、少しほてった小さい顔は化粧もしていないのに目は大きくまつ毛も長い、小さい唇は柔らかそうに微笑んでいる。
新の体の隅々まで静電気が走った。新は呆然と立ち尽くした。
「どうしたんですか新さん?」荷物を抱えて和室にもどりながら立ちすくむ新を不思議そうに見ている。
新は女性の前では緊張して固まってしまうことをすっかり忘れていたのだ、美しい女性ならなおさらだ。ぎこちなくやっとテーブルにたどり着いた。
綾乃もリビングにやってくると新の前へ座った。「私もコーヒーいただいていいですか?」
「はい、やり方分かりますか?」
「分かりまーす」
コーヒーを入れてテーブルに戻ってくると、緊張している新を見てくびをかしげた。
「どうしたんですか新さん」
「どうせすぐにばれるので言ってしまいますけど、僕は綺麗な女の人の前では極端に緊張してしまうんです」
「えっ、今さらそんなことをいうんですか?」
「これまで綾乃さんのカゼやいろんなことがあったので忘れていました、でも今綾乃さんが美人だってことに気が付いてしまったんですよ」
「やだ、冗談はやめて」綾乃は笑い転げた。
新は真っ赤な顔をしてテーブルにうつぶせた。
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