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恋の種がポトリ
翌朝綾乃は、グッと距離感を詰めた感じで視線を投げかけてきた。
「おはようございます、きのうはとってもいい話をありがとうございました、お礼に朝ご飯を作りますね」嬉しそうにキッチンへ行った。
新は「うーん・・・・」首を横にして考え込んだ。
しばらくしてテーブルに並んだ朝食を見て不覚にも思わず笑顔になってしまった。シンプルだが新の味覚を優しく抱きしめるように刺激した。
わかめとキャベツのホットサラダ、卵焼き、お味噌汁だ、材料は同じものしかない。しかし朝だからこそのほっとするおいしさだ。
「同じ材料なのになんでこんなにおいしくなるんですか?」
「よかった、気に入ってもらえて」うれしさをまぶたににじませ目じりを下げた。
「とってもおいしいし、安心する味です」うれしさと卵焼きでほほをふくらませた。
「買い置きの材料に乾燥わかめやごま油・めんつゆとか、あまり自炊しない人が買わないものがいくつか見かけられますけど、彼女さんのアドバイスでか?」
「昨夜話したでしょう、彼女なんているわけないです」
「そうですか、でも少し女性の意思を感じたんですけど」
「そうですか?・・・ああ先輩の彼女の瑠美さんからアドバイスがあったようで、先輩がそのメモを見ながら買い物かごに色々と入れてたみたいです、だからお粥やカゼ薬もストックされてたんですよ」
「そうだったんですか、新さんって愛されてるんですね」綾乃はなぜか少し安心している。
「先輩には何かとお世話になってます」
「でも、もっと野菜を食べないと体に良くないですよ」新を上目で見た。
「一人ではあまり作らないんで・・・そうだ!買い出しに行ってもらえませんか?食費を出しますから」
「そうですね、私も色々と・・・・」
「よかったらバイト代を半額先にお支払いしましょうか?」
「ほんと!それすごく助かります、着替えやほかにも必要なものがあって」声が嬉しそうに響いた。
新はサイフから5万円と食費の2万円をだして綾乃に手渡した。
「ありがとう、すっごく助かります」
「そこの壁にバスの時刻表が貼ってあるんだけど、ここはバスの便が少ないからなあ・・・」
綾乃は時刻表を見ながら考えている。
「じゃあ早速行ってきていいですか?データ入力は大丈夫ですか?」
「うん、まだ日にちに余裕があるから大丈夫だよ」
「行ってきますけど、夕食に食べたいものがありますか?」
「おまかせしまーす」
綾乃は小さなバッグをもって出かけて行った。
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