事件は突然に

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事件は突然に

押し入れの買い置きがどれくらい有るのかと思い、確認していると奥に小さな紙箱が2つあることに気が付いた。 何だろうと思い少しだけ大きい方を開けてみた。1刷のアルバムと数十枚の写真が入っていた。中を見るのはプライバシーの侵害のような気がして箱のフタを閉じた。そのうちに妹さんと連絡が取れたら渡そうと思った。  もう一つの小さめの箱を開けてみた。新聞紙にくるまれた物が入っている。恐る恐る新聞紙を開いて中身を確認すると慌ててもとに戻した。 「嘘だろう・・・・・」 もう一度呼吸を整えゆっくり新聞紙を広げた。中には帯のついた綺麗な一万円札が入っている、厚みからして一千万程有るように思えた。 新はつばを飲み込んだ。そしてしばらく呼吸するのを忘れた。 「どうしよう・・・・」その紙箱を前に途方に暮れた。 しばらくして少し自分を取り戻した新は、とりあえず見なかったことにした。本棚の写真立てを持ってくるとアルバムの箱に入れ二つの箱を元の場所に戻した。 「ゆっくり後で考えよう」今の新にはそれしか思いつかなかったのだ。    なかなか寝付けなくてポケキャバに会話を申し込んだ。 『どうしたの?』 『外で何か知らない鳴き声やガサガサと音がして眠れない』など、どうでもいい話をした。 気をまぎらわすために、初めてボトルキープをしてみた。一万円のワインをキープした。どうやらこれで一時間会話のし放題らしい。 話題に乏しい新は、コンパに連れていかれ「暗い」とか「空気が読めない」とか散々な目にあったことなどを話した。すると心結も色々と話してくれた。 高校になって反抗期になり遊びまわったこと、そして食生活などが激変してアレルギーになったこと。そのせいで肌がカサカサになり、いじめにあって今引きこもっていることなどを話してくれた。 本来はプライベートのことは話してはいけないらしいが、少しでも新の寂しさを和らげてあげたいと思ったらしい。 新はそんな心結に距離も時間も超えて響きあう気がした。    一時間はあっという間に過ぎた。二人はすっかり打ち解けたような気がした。どこまで真実の話かは分からないが、そんなことはどうでもよかった。 言葉の森で語り合い、心を落ち着かされたことが救いだった。 「愛なんてなくてもいいか」新は独り言が多くなった思いクスリと笑った。
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