出会いは突然に

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出会いは突然に

新は買い物をするために初めて町営バスに乗った。淡い緑色をしたバスは小さめで可愛かった。 スーパーへ行き足りないものを色々と買って、両手いっぱいの荷物を抱えてまたバスに乗り帰る。 「やっぱりバスでの買い物は限界があるなあ」なれてきた独り言がバスの中で一緒に揺れた。  ふと後ろの座席を見ると、若い女性が一人乗っていて窓の外を見ていた。こんな場所には似合わない。 別荘近くのバス停で下車すると、その女性も降りてきた。ほかの別荘へ行くのかと思ったがジロジロ見るわけにもいかない。 新は急ぎ足で両手の荷物をゆらしながら帰ってきた。  しばらくすると「ピンポーン」玄関のチャイムがなった。おそるおそるドアを開けると先ほど同じバス停で降りた女性が立っている。 「あのう、突然にすみません、相原真一という方をご存じないでしょうか?このあたりの別荘に住んでいると聞いたんですが」 新は一瞬あの黒い外車の男を思い出したが、あの男とは人種が違うように感じた。 「相原真一さんはこの別荘の前の持ち主です、もう亡くなられて売りに出され、今は僕が買い取って住んでいます」 彼女の顔から血の気がスーッと引いて、その場に力なく座り込んでしまった。 「お祖父ちゃん亡くなってしまったんですか・・・」彼女はつぶやくように言った。 新は落胆している彼女をきのどくに思った。そしてこの別荘に初めて来たとき、この家が誰かを待っていたように感じたのは彼女のことかもしれないと思った。 「すみません、僕には何もできませんが中を見られてもいいですよ、もうほとんど何も無いですけど」 彼女はツーッと落ちる涙を指先で拭いて新を見た。 「お祖父ちゃんの見ていた景色くらいは観れるかもしれませんよ」新が優しく言葉をかけると 「ありがとうございます、お言葉に甘えて少しだけお邪魔します」彼女はコロコロと引いてきた荷物を玄関に置いて上がってきた。 リビングに入ってくると本棚を見て少し不思議そうな顔をしたがそのまま室内を見渡した。 「お祖父ちゃんここで1人で暮らしていたんですね」沈みかけた心から声を出すように言った。 リビングのテーブルにコーヒーを入れて出すと、お辞儀をしてそのコーヒーを温まるようにして少し飲んだ。 「遅かったです・・・もう少し早く来れたら」 何か事情はありそうだが、新は何も聞かなかった。それよりももうこの時間では帰りのバスは無い、彼女はどうするのだろう。 よく見ると彼女は少し震えている。顔も少し青ざめている、カゼでもひいているのではないだろうか。 そう思った瞬間彼女はスーッと椅子からくずれ落ちた、「大丈夫ですか?」倒れこむ彼女を支えた腕から伝わってくる感じでは、熱があるのはあきらかだ。 「すみません、よかったらこっちに来てください」そう言って支えながら和室へとつれてきた。 先輩の持ってきた瑠美さん用の寝袋を広げ、彼女を寝かせた。 「すみませんカゼをひいてしまったみたいで・・・」彼女は無抵抗でふるえている。 新はもう一つの寝袋やタオルケットなどをかけて、彼女が寒くないようにした。彼女は死んだように眠った。
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