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腹に腎結石が出来て入院した時の事。
5日間の入院だったが、当時ニコチン中毒だった私は、普段と同じ様に、夜中に吸いたくなると、目が覚めてしまっていたのだった。その日も夜中に病床を抜け出して、病棟内を散歩していた。
夜中の病棟には、苦しそうに呻く声や、バイタルの忙しない発信音が鳴っていて、中々賑やかだった。
だが、大抵の患者は寝静まっていて、静かな闇に包まれた夜が多かった。
ある日の朝、同じ病室の患者がナースコールをした。
その患者は看護師との会話を盗み聞きした限りでは、数日後にICUに移る事が決まっている様だった。
患者が言った、
「昨日は煩かったねえ。夜中に騒ぐ人が居ると困るねえ」
看護師が応える。
「ええ、そうですね。大声を出されると困ります」
昨夜、一晩中起きていたが、騒ぐ声など聞いていない。
患者と看護師の、どちらが狂っていたのかは、定かではない。
或いは―――幽霊が騒いでいたのだろうか。
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