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そして望が生まれて一か月が過ぎ、里帰りを終えて今日依織と望は帰って来たのだ。
仕事で迎えに行けず依織の両親がこちらに送ってくれて、到着したと連絡をもらってからは仕事中にもかかわらずソワソワして早く家に帰りたかった。
帰っても一人ではないとわかっているから、気持ちが浮き立ち家路も輝いてみえたのだろう。
それともう一つ、尚にはやっておくことがあった。
上着を脱ぎ、一旦部屋を出て手を洗う。
帰りに受け取ったものは背中の方に隠しつつ、玄関に置いた荷物を部屋に持っていく。
依織はどんな反応をするだろうか。
気に入ってくれるだろうか。
緊張しながらソファーに座っている依織に話しかける。
「実はさ、依織に渡したいものがあって…」
「ん?何だろう?」
「はい、これ」
背中の方に隠していたものを依織に差し出す。
「えっ!お花だ〜。ピンクの薔薇?可愛い〜。ありがとう!」
思いのほか依織は喜んでくれた。
用意していたのはピンク色の薔薇やかすみ草などの花束だった。
「どうしたの?これ」
花束を眺めながら聞いてきた依織に気持ちを伝える。
「えっと、まずは出産お疲れ様。それと立ち会えなくてごめん。何かいろんな気持ちがあってこれって言うのは難しいんだけど、とにかく俺をお父さんにしてくれてありがとう。心ばかりですが感謝の気持ちです」
緊張しながらそう伝えると依織は驚いた顔をして、花束に顔を埋めた。
ちゃんと気持ちを伝えなきゃと思いつつ、伝えるなら顔を合わせてがいいと今日になってしまった。
花束一つで感謝の気持ちが伝わるとは思わないが何かをせずにはいられなかったのだ。
中々顔を上げない依織に不安になりつつ声をかける。
「依織?大丈夫?」
やっと顔を上げた依織は目をうるうるとさせ涙ぐんでいた。
「もー、こっちこそだよ。こっちこそ私をお母さんにしてくれてありがとう。それとこんなに嬉しいサプライズ。ありがとう。すごく嬉しい!」
依織は泣き笑いながら本当に嬉しそうだった。
そんな依織の顔を見て、やっぱりお母さんになった依織もすごく綺麗だと思った。
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