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「あっ、カードもついてある」
依織は花束につけてあったカードを見つけ、中を開いた。
「え〜っと、『ありがとう 尚&望』って書いてある。
尚はわかるけど、望からも?」
カードを見ながら依織は不思議そうな表情をする。
聞いてきた依織に花束のもう一つの意味を教える。
「少し過ぎちゃったけど、望からの初めての母の日のプレゼントって意味も一応こもってます」
尚のその言葉に依織はもっと泣き笑いの表情になった。
「も〜。尚くん、ずる過ぎるよ〜!こんなの泣いちゃうよ」
依織に感謝を伝えるためにやったことだったが、こんなに喜んでくれるとこっちの方が嬉しい。
感謝の気持ちが少しでも伝わったのなら更によかった。
「本当にありがとう、尚くん。あっ!よく見ると薔薇の中にピンクのカーネーションもあるね」
ピンクの薔薇の中に紛れていたピンクのカーネーションも見つけたみたいだ。
「そう。母の日過ぎてるからカーネーションは無理かなと思ったんだけど、あって良かったよ」
そんな裏話をしつつ、依織の隣に座る。
依織はまだ花束をニコニコと眺めていた。
依織の目はキラキラと輝いていて、花束を宝物かのように眺めている。
「母の日かあ〜。私、本当にお母さんになったんだなあ」
「俺もお父さんになったんだよなあ」
依織と二人、急に感慨深い気持ちになって、望の寝ているベビーベッドを眺める。
「これからお母さん、頑張らなくちゃ」
花束を持っている手にグッと力をこめて依織は呟く。
「うん。俺も頑張るよ。二人で頑張ろう」
尚の言葉に、依織は一瞬きょとんとしたものの安心したように微笑み少し肩の力を抜いたようだった。
「そうだね、二人で頑張ろう」
二人して決意を新たにする。
「これからもよろしくね、お父さん」
「こちらこそよろしくな、お母さん」
そう言って二人で笑い合う。
いつまでも今日の、この気持ちを忘れずにいられたらいい。
今日から、新しい生活の始まりだ。
大変な事もたくさんあるだろう。
二人の時より喧嘩も多くなるかもしれない。
それでも、小さな守るべき存在とお母さんになった妻との日々が、楽しみであることに変わりはない。
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