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薄暗い部屋の中、陽の光がまっすぐ斜めに角度を付けて差し込んでいる。寝たいだけ寝て、それでもなお寝ようとしたが、身体の自然な摂理で目が覚めた。頭の中はぼんやりだ。朝は何も食べたくないし、食べる習慣はない。夢を見る習慣はあったが、目が覚めると、すぐ現実に引き戻される。現実とはこういうことだ。 大学を中退して何もやってないことにまずさを感じたが、実家住まいなので、いわゆる食えない状況ではない。飢え死にしないということだ。別に予定があるわけではないが、近所の川辺沿いを散歩したくなった。着の身着のままのジャージ姿で外を出た。午前11時という時間帯は川辺沿いを歩いている人は少ない。マルチーズを散歩させるおばあちゃんに出会ったくらいだ。軽いリズムのある歩行は自分にとっては悪くない、心地よい。だが、歩行による軽くハイになるところで頭の脳裏にある不安で自分は暗い気持ちになる。国立大学に入ったはいいが授業についていけなくなり、辞めてしまった。大学で友達が出来なかったのも原因かもしれない。レールから外れてしまった感覚また、それを振り払うように軽いランニングで歩き始めた。喉が乾いた。小銭はある。財布を持参して散歩に出る自分であるが。 自販機が、目に入った。そこで休憩を取ることにした。コカ・コーラを購入した。 コーラを飲んだ瞬間。昨日テレビで横井庄一の特集をやっているのを見たのを思い出した。横井庄一は、戦争が終わっているのを知らず28年間グアム島でジャングル生活を送った人物だ。 観ていたときは特に感銘を受ける印象はなかったが、急に今、横井庄一が先の見えない生活に不安に襲われる場面が出てきても、それを払拭しよと服作りなどモノづくりに励む様が今の自分無理やり重ね合わせた。「そうだ。俺も何か始めなければ!!」
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