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仕事が終わった。念入りに制汗スプレーを振ってきた。クルマのヘッドライトやネオン管のような看板の光が目に輝く、美しい光景として目に写る。俺は先に着いた。天神にあるビルの5F、サイゼリアで待ち合わせをしていた。定刻になるとミハルが現れた。お待たせ!!と言った。サイゼリアはビルの5Fにあるため、天神のビル群から発なたれる光が鮮やかに見える。ミハルと俺はすぐに窓際の席に案内された。メニュー表を見るとすぐに、ミハルはスパゲティとからみチキンを頼んだ、それとグラスワイン。俺も二十歳になっていたので、白ワインとステーキセットをがっつり食べたいので頼んだ。すぐに料理はやってきた。テーブルに料理の皿が並べられていく。俺の視界には、テーブルマナーがしっかりしてるであろうミハルが映る。俺はお腹が空いていたので、ガツガツとステーキを食べ始めた。一呼吸置いて、ミハルが。 「論文書くの、たいへんなんだなぁ。」と言った。 「へぇー、優秀なミハルさんでも、やっぱり書くことってたいへんなんですね。」 「そうなのよ。いろいろ英語の論文を読まないといけないし。それをアウトプットして、自分の考えを盛り込んで、書かないといけないし。でも調べることは好きなんだよ。」 「英語、苦手だったなぁ。だから大学は理系に進んだということもあったなぁ。」 ミハルは、ベルベット生地の緑のワンピースを着ている。俺はこの日のためにセットアップを着ている。ミハルのモノの食べ方を見ていると、ナイフとフォークを使ってからみチキンはきれいに分解された。スパゲティはくるくると気持ちの良いリズムで巻き取られ、口に運ぶさまを見るとミハルは育ちがいいんだろうなと思う。そんなミハルが急にエスカルゴを頼んだ。 「わたしって、こん虫食についても調べるじゃない、エスカルゴって、食用じゃない。メニューにあるから食べとかないと。」 エスカルゴ、かたつむりは、虫ではないが。女性がエスカルゴを頼んでる様に圧倒された。 ミハルは話を続けた。「高校のとき、先生が言ってたけど、物資の乏しい国では、チョコレートや缶ジュースを外部から来た人はあげちゃダメなんだって。その味が忘れられなくなり、親に貧しくて、買えないのにねだるようになるからだって。」 「へぇーそうなんだ。」 俺はミハルに勧められてエスカルゴを食べる。バター風味で意外においしい。 「世界情勢についても目を向けてるんだけど。 調べてみると、日本人って、やっぱり真面目だわ。仕事に対して勤勉だよね。国によっては昼間から男の人が遊んでばかりいる国もあるからねー。」 「ボクは日本人は真面目に働き過ぎなんじゃないのかあと思いますけどね。自殺率も高いですし。 」 「そうね。キミはあんまり真面目に思い詰めたりしないほうがよさそうだね。でも、やっぱりわたしは、真面目に働いている人のほうが好きだよ。」 そんな話をしていて、一時間くらい経ってデザートを食べて、それで終わった。エレベーターで5Fから1Fに降りたりすると、それぞれ帰宅のため、別の方向へ歩き出した。
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