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蒸し暑い夏。サイダー味のアイスバーを食べながら、俺はあるところに向かっていた。
光が煌々と漏れ、遠くから見ても大きな建物だ。
その施設は団体登録をすると、一室を借りれて集会などを開催できる。泉の会もここで例会を開催している。泉の会は、種々の身体障害、精神障害を持った者が、お互いを励まし合いながら生きることをモットーにした団体だ。
見れば、だいたいその人が醸し出す雰囲気でどんな障害か?わかる。車椅子に乗っている人、健常者に見えるが、暗い表情の人がいる。レジメに沿って議題が進行しているみたいだ。
沢田という優しそうなおじいちゃんが団体の責任者だ。いつも例会の司会進行をしている。俺が軽く挨拶すると、皆口々にこんにちはと言った。参加者が円形に輪になって並んでいる。
本日の議題は相模原障害者施設事件である。
沢田がこれは障害者にとって、許すことのできないとんでもない事件であると言った。
会に参加しているほとんどの者が。うん、そうだという顔をした。そこにスーッと手を挙げる者が現れた。
「池田です。植松ってやつは世の中に対する自己主張があったんじゃないでしょうか?」
池田は遠くからでも何日も風呂に入ってない匂いがした。なぜかサングラスをかけている。車椅子にも乗っているみたいだ。
「あなたは障害者の立場からモノを言っているんですか?」
それをなだめるように沢田が言った。
「俺は元々健常者で自分の中に障害があるから、障害者という垣根はない。俺も車椅子になって、家族から疎まれるようになった。それから社会からの疎外感を感じながら生きてきた。社会のお荷物さ。植松の障害者が社会に迷惑をかける。発言はわかる。」
「毎回フラストレーションを例会でぶつけるのは止めませんかり?池田さん。」
沢田はあきれたように言った。
「ここにいるのは犬のように。はい、そうですねと人の意見に従うだけの奴隷根性のやつばっかだろう?俺は個人主義だから、どんどん自分の想ったことを主張していきたい。」
「わかりましたよ。池田さん、けど例会の進行とかあるから、なるべく自己主張は控えめに。」
「わかったよ。」
池田は吐き捨てるように答えた。そのあとの議題でも池田は大多数とは反対の意見を述べた。
議論が白熱するときもあった。
「次の例会ら7月23日の水曜日ですね。それでは、皆さんありがとうございました。」
例会は、無事終了した。
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